大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)64号 判決 1950年3月25日

被告人

川口賢治

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋地方裁判所に差戻す。

理由

弁告人原田武彦の控訴趣意について(前略)

依つて按ずるに公判期日外に於ける裁判所の訴訟手続は広義の公判準備と看るべきものであるから該手続に於ける被告人以外の者の供述を録取した書面は刑事訴訟法第三百二十一条第二項の規定に依り同条第一項所定の条件が無くとも之を証拠とすることができるものであるが、然し右の書面は同法第三百三条の規定に則り同法第三百五条の手続を以て之を公判期日に於て取調べなければならないものである。然るに原審公判調書を通じて看るも右の手続を履践して之を取調べた記載がないから原審は右の手続を遺脱したものと認めるの外はない。換言すれば原審は適法な証拠調を経ない書面を断罪の資料としたものであつて明に判決に影響を及ぼすべき採証法則の違反があると謂わなければならない。(論旨は理由がある。)

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